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第18話-9 壱川春
そうして春はそれに微笑み返した後、申し訳なさそうに彼に尋ねた。
「あの、これ.....どうやって聞くんですか?」
彼は拍子抜けした顔をした後、ハハッと吹き出すように笑い、携帯貸してください、と、ハガキに書かれたQRコードを読み込んだ。
そうして、丁寧に動作方法を説明してくれた。
ありがとうございます、と深々と頭を下げる春に、彼は笑い、いやぁ〜、と息を吐いた。
「めっちゃ良い曲だったすよ、これ。俺まで恋してる気持ちになっちゃって。すげー好きなんだろうな、その子のことって。」
そう言った後、彼はふっと表情を変えた。
そして春の目を見つめた。
そうして、何か言いかけて、やめた。
再びニコッと笑顔になり、
ちゃんと聴いてあげてくださいね、
と彼は優しくそう言った。
春はそれに戸惑いつつも、はい、と返事をした。
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