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第19話-2 今瀬秋

自分にだって、心底、分からないことだった。


 これまでは、春に出会うまでは。 

普通に女の子に恋して、その柔らかそうな肌や自分を見上げる目線に、そんな女の子特有のあれこれに、秋はときめいてきたのだ。 

けれど、春がその全てを変えた。

 そんな張本人に、"女を好きだった秋が、男である僕を好きになることはありえない"と否定された。 でも、そんなわけはなかった。 じゃあ、説明がつかなかった。 

春への好きだと思う気持ち。 

ちいさな何気ない春の仕草や春を構成するその全てを、秋は愛おしく思っていた。 
時に鋭く見えるほど、恐ろしく整った容姿。 
___完璧な配分で置かれた目や鼻、長いまつ毛に小ぶりな唇。 シャープで無駄のない骨格で構成された小さな顔。 
平行的な二重ラインに、少し青みがかった大きな瞳。
 少し色素の薄い、細く緩く癖のかかった柔らかな髪。
 透き通るほど白く、毛穴ひとつない綺麗な肌。

 そうして中性的な美しさを保ちながら、細く長い首筋に浮かぶ喉仏や、すらっとした長身、痩せ型で華奢でありながらダンスで鍛えたであろう綺麗な筋肉のついた体躯が、より春の魅力を引き立てていた。 
秋はそうした春の見た目に圧倒されて、春に興味を持つようになった。 今だって、しばしばその美しさに驚いてしまうほどだ。 目が合うたびに胸が高鳴るほど、その容姿に惚れ込んでいた。 でも、秋はそうした春の見た目よりももっと奥にある、春自身の何気ない仕草にいちいち心を揺さぶられるのだ。

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