153 / 209
第19話-4 今瀬秋
――「春は俺のことどう思ってるの?」
最後に問いかけたその答えを、
まだ秋は聞いていない。
春のあんな表情を、秋は初めて見た。
いつもの優しい微笑みなんてそこにはなくて、
その表情に余裕はなく、
大きな恐怖と不安と、どこかすがるような憂いが揺れる大きな瞳で、春はじっと、秋を見ていた。
秋の行動が、言葉が。
春の奥底にある深いところまで届いていることは、
そんな春を見れば分かった。
春と最後に言葉を交わしたあの夜のことを思いながら、秋は春に届けたいと思う一心で新曲を書き上げた。
でも、それを春に聴いてもらうことさえ出来なかった。
会いたい。
今すぐに春に会いたい。
――春が好きだ。
言葉にそう呟いてみて、
秋は思わず嗚咽を漏らして泣いた。
ともだちにシェアしよう!

