154 / 209

★第20話-1 好きなままでいいよ

高校三年、高校最後の文化祭の日になった。 秋のワンマンライブから数日経ったこの日、高校最後の文化祭であるというのに、秋は未だ浮かない顔をしていた。 春はずっと仕事で学校に来ていない。 
今日もきっと、来ないのだろう。 でも、と秋は思う。 会ってもきっと、春は何もなかったように、
いつものように微笑むだけなんだろう。 いくら秋が春に思いを告げ、春の内側に入り込もうとしても、ああして春はいつも最後には秋を締め出してしまう。 「これ以上踏み込んでもお互い幸せになれないよ」 数日経った今も、その春の言葉に秋は新鮮に傷ついて悲しく思った。 
春が好きだ。


 春には、そんな秋の気持ちはとうに届いてるはずだ。
反応を見ればそれがよく分かった。 でも、春はそれを受け入れることは、
きっとしないだろう。 もうこれ以上、春に踏み込んでいく勇気が、
秋には残っていなかった。

ともだちにシェアしよう!