155 / 209
第20話-2 好きなままでいいよ
秋は文化祭に参加する気になれず、一人中庭の隅っこで、出店で賑わう人らを眺めてぼーっと座り込んでいた。
「秋くん!」
その声かけに秋が顔を上げると、
そこには白石由真がいた。
白石は秋のクラスメイトで、今人気の若手女優だ。
高2の頃、白石が秋のファンだと声をかけてくれて以来、時折連絡を取る仲だ。
白石はふっと秋の隣に腰掛け、秋の顔を覗き込んだ。
「元気ないね?」
「え、え?あ、いや、そんなことないよ」
「そんなことあるよ。最近ずっと元気ないよ」
白石のその言葉に、秋は誤魔化すように話題を振る。
「てかさ、ワンマン来てくれてありがとうね、めっちゃ嬉しかったよ」
「ううん、凄い良かったよ。お客さんも去年より増えてたよね、凄いね」
「いやいやそんな、白石さんに比べたら俺なんてほんと、全然だから」
「そんなことないよ。全然、うまくいってないし」
「そうなの?そんなふうには見えないよ、だって今度ほら、ドラマ出るんでしょ?」
「目立たない役だよ〜。事務所の先輩のバーターだしさぁ。」
そう言って白石はカラッと笑う。
秋はそんな白石に明るく声をかける。
「いやいやでもすごいよ、テレビでしょ!俺絶対見るわ!毎週リアタイする!」
白石はその秋の言葉に、ニコッと微笑んで嬉しそうにありがとう、と言った。
秋はんあーっと声を上げ、両手を伸ばした。
そんな秋をちらりと白石は見て、それから秋に尋ねた。
「秋くんが好きなのって、壱川くん?」
突然の問いに、秋は思わず固まる。
え、え…と言葉に詰まる秋に、白石は最近ずっと来てないね、壱川くん、と続けた。
ともだちにシェアしよう!

