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第20話-4 好きなままでいいよ
「でもとっくに、振られてるから。それに…ワンマンにも来なかったし。曲も…聴いてもらえなかったから」
そう言ってしんみりした空気を変えようと、てかなんで春ってわかったの、と砕けて秋は笑って聞いた。
すると白石はだってさ、と言った。
「仲良いじゃん、二人」
「仲良い…?ように、見える…?」
「見えるよ。それに」
「壱川くん、秋くんにだけはさ、ちょっと違う顔、してるよ。いつも笑ってるけど…ちょっと違う」
「そ、そう…?」
「そうだよ。私は…秋くんをずっと見てたから分かるよ。だって秋くん、いつも壱川くんのそばに行くんだもん。目に入る」
そう言った白石はどこか拗ねたような顔をしている。
秋はその表情を見て、思わず少し微笑んだ。
「目に入るって…」
そうして白石は立ち上がり、そっと秋の目の前に手を伸ばした。
秋はそれに驚くが、白石がその手をもう一度秋に向けて差し出す仕草をしたので、その手をそっと掴んで立ち上がった。
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