161 / 209

第21話-2 君のお友達

「壱川くん専用のお皿だったりした?」 「あ…専用っていうか…俺が勝手に買って…それで出してただけで…」 白石はふっと笑っていった。 「よく来てたの?壱川くん」 「…よくっていうか…まあ…たまにだけどね」 「そっか」 
こういうことはよくあった。 ふとした話題、ふとした拍子に秋は春を度々思い出し、そしてどこか浮かない表情を浮かべる。 そしてそれに気づいた白石が、こうやって春の話を聞くのだ。 ごめん、と謝ると決まって白石は言った。 
「だからいいって。好きでいいって言ったでしょ」 そういう白石の表情はどこか寂しげで、
秋はその度に心が少し痛んだ。 
それでも白石と一緒にいるのは、
秋の中で、春のことを諦めたい、と思っていたからだ。 早くこの気持ちに踏ん切りをつけたい。 秋はそう思っていた。 忘れないと。 好きなままでいい、と言われても、
秋はそれじゃダメだと分かっていた。 
あの日、白石に甘え、
秋は白石の告白を受けた。 甘えていてはダメだ、と秋は思った。 好きな相手に別の好きな人がいる。
 そんなの、いいわけがない。 
きっと白石は苦しいはずだ。 選んだのなら、ちゃんと白石を好きにならないと。

ともだちにシェアしよう!