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第21話-3 君のお友達
その時、秋の携帯が鳴った。
誰だろう、と画面を覗くと、向井、と表示されていた。
向井とは、以前秋が受けたドラマ主題歌コンペの脚本家だ。
向井は若いアーティストや俳優を狙い、仕事を振る代わりにその青少年らに手を出すような男だった。
秋も向井に狙われ、しかし秋は向井を突っぱねた。
ドラマ主題歌はやはり別の人に決まり、秋は少なからず落胆した。
あれから向井からは何も連絡はなかった。
秋は迷った挙句、その電話をとった。
「…もしもし」
「あら、出た 出ないかと思ったけど」
向井はなにやら楽しそうに話し出した。
「もうすぐ君のお友達がね、遊びに来るんだけど」
「友達?」
そういって秋はハッと顔を上げる。
「…春ですか?」
「あはは、そうそう で、秋くんも来ないかなーって」
秋はぐっと唾を飲み込み、
行かないです、と低い声で言った。
すると向井は、えーそっかぁ、と言った後、
でも、と続けた。
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