165 / 209

第22話-2 向井聡

春はそれからすぐに大きな作品の主演を務め、業界内では有名な子役になった。 
至る所で度々目にするようになり、向井は春が成長していく様を楽しみに観察するようになった。 


あと少し、もう少し。 


果実が実るのを楽しみに待つように、
向井は春が男性として実る様を、
心待ちにしていた。



 そして春が15歳になった頃。

 向井のドラマに、春がキャスティングされた。 

地上波ドラマの、一話のみのゲスト出演。 
その回のキーを握る、重要な役どころだった。 


向井はキャスティングには噛んでおらず、
壱川春が決まったとプロデューサーから聞いたとき、
じとりと笑った。 


まだ少し早い、と思ってはいたが。





 向井は珍しく、撮影現場に向かった。 

4年振りに春を生で見た時、向井は思わず息を呑んだ。 

あの時もそうだったが、桁違いだった。 



この世のものとは、生身の人間だとは思えない。 

常軌を逸した美しさだった。

ともだちにシェアしよう!