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第22話-4 向井聡
撮影の後、重要な役だから詳しく説明をしたい、と春のマネージャーを言いくるめ、向井は春を一人自宅に招いた。
春をソファに座らせた。
相変わらず、少しだけ口角をあげて、
小さく微笑んでいる。
そうしていると、まるで本当に人形のようだった。
向井はそんな春の前に立ち、そっと春の頬に触れ、
くいっと顎を上げた。
春の視線が向井の視線と交差する。
「その顔、やめて」
向井は言った。
春は未だ、口角をあげたままだ。
「売り物の君の顔じゃなくて、君の素の顔が見たい」
そう言った向井に、春は表情を変えず、
ただこちらを見ている。
続けて向井は言う。
「…君は上手に嘘をつくね」
少しだけ、春の瞳が揺れるのがわかった。
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