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第22話-6 向井聡

その後も、春は向井に抵抗することなく、
向井が言うこと全てに素直に応じた。 

向井が春の顔に近づき、向井の指が春の唇に触れた時、向井は聞いた。 

「本当にいいの?」 

春は微笑みながら言った。


 「したいなら、どうぞ」




 口を開けて。
 舌を出して。
 手を握って。
 触って。


 向井のどんな要求も、春は受け入れ、応えた。

 ただ、春は最初に言った「その顔をやめて」という要求には応えることはなかった。 

向井が"嘘をついている"と揶揄したその表情のまま。



 春の手を引き、ベッドへ連れていく。 

また頬に触れ、春の唇に向井は自分の唇を重ねた。

 そうして春を押し倒し、春のベルトに手をかけた。 

春のものに触る。
 硬く、反応していた。

 春の思わぬ反応に、向井は昂る(たかぶ)。

 向井は春の目を見る。
 春は変わらず、向井のことをじっと見ていた。

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