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★第23話-1 寂しい

「はは、早いねぇ」

 玄関のドアを開けて、向井はそう言った。


 秋はそれに、睨みつけるような鋭い視線を向ける。 

「春は?」 

「いるよ」


 向井のその返答に、すぐさま秋は中に押し入る。


 足早にリビングに行くと、春がソファで眠っていた。 

服はだらしなくはだけていた。


 「春!春!」

 そう言って秋は春の身体を揺さぶる。 
しかし、春は眠ったままだ。 

ふと、ソファ前の机に置かれた薬に目をやる。 

遅れてリビングにやって来た向井に喰ってかかるように、秋は問いかけた。

 「何したんですか?何飲ませたんですか?!」 

向井はそれに乾いた笑いをあげ、
ただの眠剤だって、と言った。


 秋はその薬のシートを手に取り、
それに書かれた薬の名前を携帯で検索する。

 向井の言った通り、それは眠剤のようだった。

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