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第23話-4 寂しい

固まったままの秋に、向井は再び言う。 

「邪魔しないでくれる?」


 「君みたいな人間が、僕たちを傷つけるんだよ」 


向井はそう、ひどく、悲しそうな顔をして、
しかしはっきりと言った。



 「…違う」

 「何が違う?」

 「あんたと春は違う」

 「同じだよ」

 「違う!」 秋は大きな声をあげる。 向井は秋の表情を見つめて、吐き捨てるように言った。 
「…そう信じたいだけだろ」


 秋は振り返り、
ソファに項垂れ眠っている春を強く揺さぶる。 

すると、春が薄く目を開けた。 

「…秋…?」
 そう小さく呟いた春の手を引っ張り、
担ぐようにして秋は歩き出す。


 そして向井の前に立ち止まり、秋は言った。

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