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第23話-7 寂しい
春を抱え、秋は自宅へ連れ帰る。
ドアを開けると、奥から白石が出て来た。
秋が何も言わず家を飛び出してから今まで、
ずっと待っていたのだろう。
秋の肩に項垂れるようになっている春を見て、白石が動揺したのが分かった。
「何かあったの?」
そう尋ねる白石に、秋はごめん、とそれだけ言い、春をベッドに運ぶ。
春は薄く目を開けたまま、何も言わない。
机には白石が作った料理にラップがかけて、
二人分置いてあった。
白石が冷蔵庫から水の入ったペットボトルを取り出し、秋に静かに手渡した。
秋は春を支え、それを飲ませた。
その様子を眺めていた白石は、静かに、「今日は私、帰るね」と言った。
再びごめんね、と白石に告げた秋。
白石は何も言わず、静かに出て行った。
すると、春が静かに言った。
「…お似合いだね」
秋の腕の中で、そう呟く春に、
秋はたまらない気持ちになった。
そう言った春の顔はとても寂しそうだった。
「…いいな」
春はそう小さく呟き、目を閉じた。
秋は声を押し殺して、春を抱えながら再び泣いた。
――
目が覚める。
泣き疲れて寝てしまっていたらしい。
ハッと顔を上げると、すでに春はもういなかった。
けれど、一件のメールが来ていた。
春から
一言、ごめんね、とだけ。
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