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第24話-2 卒業式の日
「…ん、春!春!」
ハッと春が顔を上げた。
「…ごめん」
「…大丈夫?」
松山は春にそう問いかけた。
卒業式当日。
その日松山と春の二人は、
日が昇る前の深夜から昼過ぎまで、
二人が主演するドラマの撮影だった。
そのドラマは高校一年の時に二人が主演したBL映画の続編だ。
あの映画は都内数カ所の映画館のみで上映される単館上映から始まったものの、美しい映像と主演二人の繊細な心の描写が話題を呼び、SNSで大きな話題になった。
そうして上映館数を徐々に増やし、全国各地でロングラン上映されるなど、結果的に社会現象を巻き起こす大ヒットを記録した。
二人の名前を全国区に知らしめ、そして人気俳優に育てた作品だ。
続編の制作が発表された時、SNSのトレンドは数日間続編ドラマの話題で持ちきりだった。
特に春はこの作品で大きな映画賞の新人俳優賞を受賞し、その後も着実にヒットを飛ばし続け、今や同世代の俳優の中では一つも二つも頭が抜けた人気ぶりだ。
松山もその後着実に仕事をこなし、オファーはひっきりなしだ。
ただ忙しさはかなり差がある。
松山は俳優業のみを行なっており、それに加え、同時期に作品の掛け持ちはしない、というマネージャーの意向がある。
しかし春はデビューを控えたアイドルグループの公演リハーサルやそのプロモーション活動、そうしたアイドル活動に加え、俳優として同時期に何本も映画やドラマの掛け持ちをしているのだ。
そんな春のとてつもないスケジュールの合間を縫って、このドラマは撮影されていた。
この日も、夜に控える春の所属するアイドルグループのデビュー公演のため、撮影は前日の深夜から春が会場へ向かわなければならない昼のギリギリまでスケジュールが組まれていた。
流石の春も、お疲れのようだ。
撮影の合間、ふとした呼びかけにさえ気づかない春を見て、松山は思った。
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