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第24話-8 卒業式の日

「…春と何かあったんでしょ?」

 「え?」

 「何があったか知らないけど…まだ、好きなんだよね、春のこと」

 秋は思わず押し黙る。
 松山は続ける。

 「連絡、してあげれば」

 「…意味ないよ」

 「え?」 

「連絡しても、春の熱が下がるわけじゃないし…それに公演で忙しいだろうし」 


「何かあったら頼ってって、それだけ送っておけばいいじゃん」

 その言葉に、秋は顔を上げる。

 「公演終わって誰か頼れる人がいるって分かったら、春だって少しは気が楽になるんじゃないの?水買ってきて、とか…パシリでもなんでもしてあげたらいいじゃん」

 「好きなんでしょ?」


 秋はグッと唇を噛み締めた。 寂しい、と言ったその春の表情を思い出す。 頼れる人、春はいるんだろうか。 

そんな秋の背中を、松山はポン、と優しく叩いた。 


「秋らしくないね」

 「…何が?」

 「白石さんのこと」

 「……」

 「俺は秋の、バカみたいに正直で優しくて真っ直ぐなところが好きだよ」

 秋がじっと松山を見つめる。
 すると松山が、あ、と言って付け加えた。 

「友達として、だからね」

 その言葉に、秋は小さく吹き出して言った。 

「分かってるよ」




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