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第25話-2 帰らないで

部屋に入り、春をベッドに寝かせた。

 思わず見渡すほど、部屋は広い。 
しかし、物はほとんど置かれていない。 

ソファとローテーブル、そして寝室にあるベッドのみ。


 春は変わらず息が乱れ、浅く早く呼吸を繰り返している。

 ベッドのそばにしゃがみ込み、春のおでこにそっと手を触れた。 


「…熱っ…なにこれ…」


 思わずそう呟いてしまうほどの高熱に、秋は狼狽える。

 「…病院、病院行かなきゃ…」
 秋がそう言って立ちあがろうとすると、春が言った。 

「……さっき…行った…から…」

 春のその言葉にそうだ、と秋はハッとする。 


「…どうしよう……あ、水…!水…!」
 そう言って秋はキッチンへ向かう。

 冷蔵庫を開け、秋はその中身の無さに驚いた。 
中には水が2本だけ。 他にはなにも入っていない。 

部屋を見渡すと、キッチン前のカウンターの陰に、大きな袋が置かれているのを見つけた。 

中を見ると、経口補水液やスポーツ飲料、ゼリーや冷えピタなどが入っていた。 そして、病院で貰ったのであろう薬も見つけ、秋はそれを急いで部屋に持ち込んでいく。

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