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★第26話-1 どうしたいか言って

「…帰らないで」 

「…ここにいて」


 小さく震える声でそう言った春に、
秋は咄嗟に何度も頷いた。 

「うん…いる…いるよ」

 そう言ってから、
秋は静かに尋ねた。 


「俺…隣にいていい?」


 そう聞くと、春は小さく頷いた。 



同じようにベッドに寝転び、秋はゆっくりと春を抱き寄せた。 春はそれに抵抗することなく、黙って秋の胸に顔をうずめている。


 秋はそっと、春の背中を優しくさする。 薬のおかげか、


浅く早い呼吸は次第におさまり、そうしてしばらくして、春が静かに眠りについたのが分かった。 それでも秋は、ずっと春の背中を撫で続けた。

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