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第26話-2 どうしたいか言って

2時間ほどそうしていた。 

秋は春の背中を撫でながら、じっと春の寝顔をただ眺めていた。



 しばらくして、もぞ…と春が動いた。 

秋が顔を覗き込むと、春もこちらを見た。 

ゆっくりと春の首に触れる。 
熱はまだあるが、先ほどより随分とマシになったようだ。


 水飲む?それかポカリとか…と問いかけ、
秋は静かに起き上がった。 


すると春が秋の服の袖を小さく掴んだ。 

じっと何も言わないで、秋を見ている。 


秋はそれに少し身体を寝かせ、
「どこも行かないよ、水取ろうとしてるだけだから」
と春に言い聞かせるように言う。


 それでも春はそのまま、袖を離さない。


 それがまるで小さな子供のようで、
秋はたまらなく愛おしくなり、再び春を抱きしめた。 

回した腕で、春の頭をそっと撫でた。 



秋は、春がこうして自分を頼ってくれたことが、
どうしようもなく嬉しかった。

 秋の袖を掴んで、どこにも行かないでほしい、と
訴えるような仕草。

 春を抱きしめることを許されているかのような、
そして、春もそれを望んでいるかのようなその仕草に、
秋は胸がいっぱいになった。

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