202 / 209
第26話-2 どうしたいか言って
2時間ほどそうしていた。
秋は春の背中を撫でながら、じっと春の寝顔をただ眺めていた。
しばらくして、もぞ…と春が動いた。
秋が顔を覗き込むと、春もこちらを見た。
ゆっくりと春の首に触れる。
熱はまだあるが、先ほどより随分とマシになったようだ。
水飲む?それかポカリとか…と問いかけ、
秋は静かに起き上がった。
すると春が秋の服の袖を小さく掴んだ。
じっと何も言わないで、秋を見ている。
秋はそれに少し身体を寝かせ、
「どこも行かないよ、水取ろうとしてるだけだから」
と春に言い聞かせるように言う。
それでも春はそのまま、袖を離さない。
それがまるで小さな子供のようで、
秋はたまらなく愛おしくなり、再び春を抱きしめた。
回した腕で、春の頭をそっと撫でた。
秋は、春がこうして自分を頼ってくれたことが、
どうしようもなく嬉しかった。
秋の袖を掴んで、どこにも行かないでほしい、と
訴えるような仕草。
春を抱きしめることを許されているかのような、
そして、春もそれを望んでいるかのようなその仕草に、
秋は胸がいっぱいになった。
ともだちにシェアしよう!

