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第26話-3 どうしたいか言って

好きだ。 

好き。 やっぱり、どうしようもなく。

 春が好きだ。 


そう心で唱えて、
秋は堪えきれず、涙が溢れた。



 春は秋が泣いていることに気付き、
そっと顔を見上げ、秋を見つめた。 


秋は春にそれを見せたくなくて、
隠すように春をより引き寄せた。 


けれど涙は止まらず、
大きく息を吸い込んでは涙と共に吐き出した。 



ついに観念して、秋は腕を少し緩めた。

 そうして大粒の涙を流し、顔を上げてこちらを見る春の目をまっすぐ見つめながら言った。

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