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第26話-5 どうしたいか言って
その瞬間、秋の中で何かがプツンと切れた。
秋は春の背中を探るように強く抱き寄せた。
既に触れていた唇を、もう一度強く押し当てる。
そうして、
二人の唇が何度も離れては触れ合う。
目線が交差する。
春の目はまっすぐ秋を求めていた。
秋は再び春を引き寄せ、夢中になって唇を重ねた。
2人の荒い吐息が部屋に響く。
春の唇が柔らかく開き、
そして秋の舌を春の舌が撫でた。
それに応えるように、秋も舌を伸ばす。
秋は身体を起こし、
春の上にまたがるようにして、そっと覆い被さった。
視線が交差し、どちらからともなく唇がふたたび重なり合う。
さっきよりも深く、長く。
また
舌が何度もふれ合い、次第に呼吸は浅くなっていく。
そうして何度もキスをして、
その唇がふと離れて見つめ合った時、
春が苦しそうに顔を歪めて言った。
「…好き」
「…秋が好き」
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