206 / 209
第26話-6 どうしたいか言って
秋はその言葉を聞いて、途端に顔を顰めた。
涙がボロボロと零れ落ちる。
春がそっと手を伸ばす。
秋の顔に優しく手が触れた。
春は秋の涙をそっと拭う。
声を漏らして泣き出した秋を、
春は引き寄せて抱きしめた。
秋も春を強く抱き返した。
「…ほんとに?」
「…無かったことにしない?」
秋は震えながら尋ねる。
春は静かに言う。
「…しないよ」
「……しなくて…いいんだよね?」
その春の返事に、秋は何度も頷く。
「いい、しなくていい……しないで」
「…うん」
ともだちにシェアしよう!

