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第3話

その日の夜、タカヤと二人で居酒屋へ。
 最初は当たり障りない話をしてたはずなのに──
 気がついたら、テーブルの下でタカヤの指が俺の指先をかすめた。 「……っ」
 一瞬で、心臓が跳ねる。
 わざとなのか、偶然なのか、わからない。 
でも、二度、三度。
 指先同士が触れ合って、そのまま指が絡む。 (やば……これ、意識しないほうが無理だろ) 平静を装ってグラスを持ち上げたのに、手のひらが汗ばむ。
 笑顔で話しながらも、頭の中は触れている指先の感触でいっぱいだ。 「……ねぇ、このあとさ」 
タカヤが、少しだけ声を低くして言った。 
「……俺んちで飲み直さない?」 「……いいよ」
 気づけば、俺は頷いていた。 タカヤのマンションに着くと、落ち着いた照明とほのかなアロマの香り。 
駅近・高級・床暖房付き──いい部屋だ。 「ソファ座って。ビールでいい?」
 「……うん」 グラスを受け取り、一口飲むと、さっきまでの緊張が少しだけ溶けた。 
でも、隣に座ったタカヤとの距離が近すぎて、別の意味で落ち着かない。 「さっきのさ……」 「ん?」
 「触ったの。嫌じゃなかった?」 ドキッとする質問。
 「……嫌じゃなかった」 なんて、正直すぎる返事が勝手に口から出た。 タカヤがゆっくり手を伸ばし、俺の手を包む。 
指の腹で、ゆっくり、なぞる。 
タカヤがゆっくり俺の手を包む。 
手の甲、手のひら、指の間を、 まるで観察するみたいに丁寧になぞったあと── その手がするりと腕を伝って、肘、二の腕へ。 肩を越えて、首すじに触れる。 指先がゆっくりと肌を撫で、耳の後ろをかすめるたび、ぞくりと背筋が震えた。 首すじから背中へと降りていく手は、服越しでも温かい。 背骨のきわを、ゆっくり、指の腹でたどられ、思わず息が漏れる。 さらに腰を回り込むようにして、太ももの外側をなぞられた。 内もも近くまで手が来たとき、タカヤが俺を見つめて、優しく笑う。 「触られるの、イヤじゃない?」 「‥イヤ、じゃない。」

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