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第7話

仕事終わりに待ち合わせた駅前の定食屋で、美咲と向かい合って座っていた。 「で?タカヤとはどうだったの?」 「……どうって、普通に……久しぶりだなって………そうだ!美咲。 お前もしかして最初から…」 「え〜なんのこと〜???証拠ある〜?でもまぁ…結果オーライじゃん?」 「いや“結果オーライ”って!」 「違うの?w」 美咲が味噌汁をすすりながら、ニヤリとする。 その顔が何かを企んでいるときの顔だって、俺は知ってる。 「なんかさぁ、愁、落ち着きないよ?」 「そんなことない」 「ほら、今も箸逆に持ってるし」 「……あ」 慌てて持ち直すと、美咲がすかさず追撃してきた。 「で、ウチの弟、カッコよかったでしょ?」 「いや……まあ……」 「まあ、って顔じゃないじゃん。頬ゆるみっぱなしだよ?」 「……うるさい」 「はいはい、図星ね。てかそれ、もう好きじゃん」 「は?」 「だって、話してるときの目がキラッキラしてるもん。 推しに会えたオタクのそれだよ」 「……そんなわけ──」 言いかけて、口が止まる。 笑った顔。 低くなった声。 あの視線。 思い出すだけで、胸が熱くなる。 (ん?……俺、これ……) 「──やっぱ、好きじゃん」 美咲の声が、妙に遠く聞こえた。 味噌汁を口に運んでも、熱いのは喉じゃなくて胸の奥だった。

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