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第15話

(翌日) ピンポーン。
 届いた小さな箱を見つめ、俺は頭を抱えた。 「……本当に来ちまった」 夜。シャワーを浴びて、 タオルで体を拭いて。
 机にぽつんと置いた新品の「それら」を前に、 何度も深呼吸。 「やるしか……ないよな」 ドキドキ、背中に汗。
 美咲の「自分で見つけとけ」の声が頭にこだまする。 ……こうして俺の“自主練”の日々が始まった。

 「俺、なにやってんだよ……」
 そう呟きながらも、 結局次の夜も、 また次の夜も続けてしまうのだった。 最初はただの異物感しかなかった。 痛くはないけど…… 気持ちいいなんて、やっぱ嘘なんじゃないかって思ってた。 3日目に 「やっぱ無理だろこれ…」と挫折しかけた。 1週間くらいで 初めて“あ、今の…!”と声が漏れた。 
――その夜。 
エネマグラを少し角度を変えた瞬間、 電流みたいなゾクリとした感覚が全身を走った。 「……っ⁉︎」
 思わず声が漏れて、手が止まる。 もう一度、同じ角度を探して動かす。
 「……っあ……!」
 腰が勝手に揺れた。 胸の奥からせり上がるみたいな熱。 喉が震えて、 呼吸が乱れる。 「……これが……気持ちいい……?」 
信じられない。
 男の自分が、こんな風に震えてるなんて。 気づけば、 手を使うよりも早く、 そこから波みたいに押し寄せてきて……。
 自分だけで、初めて達してしまった。 2週間目にはもう 「気づいたら毎晩触ってる」状態。 慣れるたびに、 体が敏感に反応していくのを自覚して、 余計に顔が熱くなる。 「……っ……はぁ、はぁ……」
 熱に浮かされた頭で浮かぶのは――
 もしこれをタカヤにされてたら、どうなってたんだろう。 その想像に、自分で鳥肌が立った。
怖いくらい、心臓が鳴ってる。 あの夜から、 練習は日課になった。
 最初はドキドキしながら手探りだったのに、 もう角度や力加減も覚えてきた。 サイズもひとつ大きくしてMサイズを飲み込むまで育ってきた。
 この大きさでも奥がむずむずして、背中がゾクってなる エネマグラを挿れて少し腰を動かすだけで、ズンと奥に響く。
 「あ……また、きた……」
 前よりも早く反応する自分に、自分で驚く。 呼吸が荒くなるのも、 頭が真っ白になっていくのも、もうお決まりの流れ。
 ベッドに背を預けながら、勝手に腰が揺れてしまう。 毎晩のように想像しては、気づけば何度も果ててしまう。
 「やば……これ……クセになる……」
 「んっ……ふぅ……」
 最初はただの圧迫感だったのに、 エネマグラを少し動かすと、 奥の一点にカチッと当たる。 「っ……! ここ、やば……」
 体が勝手に反応して腰が浮く。 気を紛らわそうと目を閉じたら、 浮かんでくるのは――タカヤ。
 居酒屋で笑っていた顔。
 「好きだ」って真剣に見つめてきた瞳。 その全部が蘇ってきて、もう止められない。 「タカヤ……っ」
 口から勝手に名前が漏れる。
 頭の中では、 もし今タカヤに後ろから抱きしめられて、優しく触れられたら…… なんて妄想が広がって―― 奥がぐりっと押されるのと同時に、 ペニスから熱いものが溢れる。
 「あ、やっ……出るっ……!」
 手を添える間もなく、 ビクビクと跳ねながらシーツに白濁を散らす。 荒い息の中、 頬まで真っ赤になった愁は呟く。
 「俺…………タカヤのこと考えて……イッちゃった……」 羞恥と興奮とで頭が真っ白になりながらも、
 「でも……次はほんとに……」と未来を意識してしまう。 
 (プラグで拡張) 平日は出勤前に小さめのを仕込んで慣らし。 帰宅後は洗浄。 Mサイズのプラグを入れたまま過ごし、 寝るまでの時間にエネマグラで快感のトレーニングに励む毎日。 (愁と美咲のLINE) 愁:今日も練習した。
 美咲:なにその報告w 愁:最初キュッてなって大変だったけど、だんだん奥まで入るようになってきた。
 美咲:キュッててwww 表現おかしいのよ。
 愁:いやほんとそうなんだって(汗 美咲:で?気持ちいいの?
 愁:……ちょっとだけ。やばいかも。
 美咲:はい、感度アップしてきた証拠〜。次は“動かさないで感じる練習”ね。
 愁:先生かよ…。
 美咲:弟子でしょ、あんたは 夜は更けていく………

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