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まさかあんな風な反応をされるとは思わなかった。ちょっと揶揄っただけなのに、耳まで真っ赤になって狼狽える彼の様子を思い出すだけで笑いがこみ上げて来る。 (あー、もう。なんなんだよ、あれ。可愛いすぎじゃね?) これまで一度だって、男に可愛いと思ったことなんてなかった。自分はいたってノーマルな筈だ。なのに、揶揄われて狼狽える一二三の姿が何故だか可愛いと思えてしまった。 それにさっき、自分は何を思った?  頭の中に浮かんだ考えを振り払うかのように小さく頭を振るとドサリとベッドに横になり、手の甲を目元に押し当てる。 総一郎の勘が正しければ、一二三は確実に童貞で処女のはずだ。ウブで未経験のまま今まで生きて来たと言うのか……。あんな綺麗な顔をして、金持ちなら相手は選び放題だろうし、適当に見繕って童貞も捨てるチャンスはいくらでもあっただろうに。どんな人生を送ったらそんな事になるのだろう? 「西園寺、一二三……か。変な奴」 誰に言うでもなく呟いて、口元が緩んでいる自分に気付いて慌てて枕に顔を埋める。 自分とは全く違う世界に生きている人種の筈なのに、不思議と嫌悪感は沸かなかった。 むしろその逆で、もっといろんな話をしてみたいと思ったし、なによりああいうのは嫌いじゃない。 あのまま顔を寄せてその柔らかい唇を塞いでやったら、あの男はどんな反応をしたのだろうか。 拒絶する? 抵抗? それとも、なし崩しに流されて……。 いやいや、何を考えている? 相手は男だぞ? しかも、御曹司でイケメン。自分が最も嫌いなタイプの筈じゃないか! それなのに――。 「はぁ、溜まってんのは俺の方、か……?」 ちょっと待て。いくら何でも見境なさ過ぎだろう。 ガバッと起き上がり、総一郎は髪を掻き上げて盛大な溜息を吐いた。

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