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「なっ、からかうな!」 「ハハッ、すみません。でも、夜間は海を覗き込んで落ちそうになる人が結構いるんですよ。それに、貴方は前科持ちなので」 「くっ、それは……ッ」 それを言われると弱い。確かに、そんな事もあったがもうそんな真似はしない。 「安全の為にも、今はこの景色で我慢してください。それに――」 不意に、総一郎が一二三の頬に手を当てた。ハッと振り返ると、肩先へ顎を沿わせる高さに屈んでいた総一郎がフッと微笑むと、するりと唇を寄せて来る。  ドキリとして思わず目を閉じたら、チュッと、軽いキスが、唇に落ちる。 「俺、ここからみる景色が好きなんです」 後ろからギュッと抱き締められて、ビクッと肩が揺れる。 総一郎の体温を背中に感じると自然と頬が熱くなってしまう。 キスは何度もしたけれど、まだ慣れない。総一郎が触れる度に心臓がドキドキと煩い音を立てて、顔が熱くなってくる。 でも、嫌ではない。むしろ、心地いい。 唇が離れて、そっと目を開くと総一郎が優しい顔で一二三を見つめていた。 その眼差しに、ドキッと胸が高鳴る。 またキスされるのかと思ったのもつかの間。不意に総一郎が一二三を抱きしめた。 総一郎の体温と匂いに、胸がムズムズしてくる。 「あー、やべ……参ったな……」 「え?」 一二三の肩口に顔を埋めたままの総一郎のくぐもった声が聞こえてきて、思わず聞き返した。 その声が少し掠れているような気がして、ドキドキと心臓が早鐘を打つ。トクトクと煩いくらいに脈打つ鼓動が総一郎に伝わってしまったらどうしよう。でも、何故か不思議とそれを嫌だとは思わない。寧ろ、もっと触って欲しいような気さえしてくる。 この感情に名前を付けるとしたら、一体なんと言うのだろうか。 まだよくわからないが、ただ一つだけわかることは、総一郎に抱きしめられると心が落ち着くという事だ。 もう少しだけこうして居たい。そんな気持ちになって、そっと総一郎の腕に手を絡める。 すると、総一郎が微かに笑ったような気がした。 そして、顎を掴まれもう一度ゆっくりと唇が重なる。今度は触れるだけのキスではなく、深く。 ぬるりと総一郎の舌が一二三の唇を割って入り込んでくる。 「ん……ッ」 鼻に掛かったような吐息が零れ、総一郎の腕を掴む指に力が籠る。 「は……っ、ちょ、待っ、んん……っ」 突然の事に驚いて身じろぐも、逃さないとばかりに総一郎の腕に力が籠り、より一層強く抱きしめられた。 鼻から抜けるような声が恥ずかしくて、思わず顔を背けたら咎めるように胸の突起を抓まれた。 「ん、ぁ……っ!」 チクリとした痛みに総一郎の腕の中で身体を捩る。誰かにそんな風に触れられるなんて考えた事もない場所が、抓られてジンっと熱を持った。 そのまま服の裾から手を差し込まれて、ひやりとした手が素肌を滑った。 戸惑う間もなく総一郎の顏が下りて来て耳たぶを挟んで上下する。時折軽く歯を立てられると、くすぐったさだけではない何かが背筋を這いあがった。 「んん、ふっ……ッ」 舌の先で耳の形をなぞられ、身を固くして堪えていると、尖らせた舌が耳の孔に侵入してくる。 「ふ、ぁっ」 その瞬間、下腹部がじゅわっと熱を帯びたような気がして腰が跳ねる。 「ここ、弱いみたいですね」 総一郎の声が僅かに上ずっている。無意識のうちに逃げようとする頭を押さえつけられ、耳への執拗な愛撫が続く。 クチュリと湿った音がダイレクトに耳の奥に響くのがいやらしくて堪らない。 洩れ出る自分の声すら官能を擽る要素でしかなく、それが益々一二三を煽っていく。 戸惑いを感じる余裕もなく、耳から腰まで駆け下りる強烈な痺れに翻弄されるばかりだ。 「は、あっ、だ、だめ……っ」 身体中の力が抜けていく。なんとかして総一郎を止めようと服の袖を引くも、その手は簡単に振りほどかれ、反対に指を絡めとられた。 「ふ……、だめじゃ、ないでしょう? こんなに気持ちよさそうな顔をして」 「あ、ぅ……」 耳に直接吹き込まれるように囁かれて、背筋がゾクゾクする。

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