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どうして突然こんな事をするのだろう? 総一郎が何を考えているのか、一二三にはさっぱり理解できない。 「あっ」 そうこうしているうちにも、総一郎の乾いた手が弛緩しきった身体をいやらしく撫で回す。余計な力が入らないせいで素直に身体を預けてしまう。 時折指が胸の突起を掠めると甘い痺れが腰に走り、もどかしくて内股を擦り合わせてしまう。 「西園寺さん、抵抗しないんですか?イヤなら逃げてもいいんですよ?」 なんて言いながら、手の甲でそっと火照った頬を撫でられる。ヒヤリとした感触に思わず肩を竦める。 「そ、そう言うなら、君が止めればいいだろう!」 生理的に滲んだ涙で潤んだ目で総一郎を睨みつけると、一瞬きょとんと目を丸くした後、小さくふき出す声が聞こえた。 「くくっ、まぁ、それもそうなんですが。西園寺さんがあまりにも無防備だからつい……」 「からかうにしても悪趣味すぎる。……もう、いいだろっ、離してくれない か?」 流石に恥ずかしくなって総一郎の腕から抜け出そうと藻掻いた。だが、総一郎の腕はビクともしない。 「別に離してあげてもいいですけど、そんな恰好じゃ、此処から出れないですよね?」 「ッ!う、五月蠅いっ」 指摘されて初めて下半身が大変な事になっていることに気が付いた。ズボンの上からでもはっきりとわかるくらい一二三の欲望は布地を押し上げてしまっている。総一郎の言うとうりこの状態のままで部屋まで戻るなんて絶対に出来るわけがない。 「き、君のせいだぞ! きみが、可笑しな事をするから……ッ」 「西園寺さん。初めて会った時からずっと思ってたんだけど、貴方は年齢の割に耐性が無さ過ぎる。そんなんじゃ、すぐに悪い大人に攫われてしまいますよ」 「ま、まさか……」 それこそ本当に何処かの狸親父や脂ぎった社長なんかに。なんて恐ろしい事を言われ、一二三の顔色が変わった。 確かに、心当たりがないわけではない。神崎はなんだかんだと理由を付けてはやたらと尻を撫でて来るし、そう言われてみれば、触り方だってなんだか違和感を感じることが多々あるような気がしてくる。 もしかして、あれは本気で襲われそうになっていたのか? もしそうだとしたら、と思うとゾッとする。 「どんな風に育ったら、こんな清廉潔白なお姫様みたいな人間が出来るのか知らねぇけど……。ソノ反応を見る限りインポって訳じゃ無さそうだな」 「……っ」 直接的な言葉と、布越しに性器を撫でられる感触にビクリと腰が震えた。 「俺、言いましたよね? 恋人のイロハを教えてやるって。丁度、キスだけってのも飽きて来たし、もっと気持ちがいい事教えてやりますよ」 恐ろしくセクシーな声でわざと耳に息を吹きかけるように囁かれた。それすらもが耳奥を撫でられるようで背筋が震える。

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