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「な、なに言って……」 「あ、それとも試してるんですか? 西園寺さんM気ありそうですし……。本当は、昨日みたいな事して欲しくて堪らないんでしょ」 目を細め低く欲に濡れた声で耳元に囁きかけると、一二三の頬が一瞬で紅潮した。 「ち、違う! そんな訳ないだろう!?」 総一郎の腕の中から逃れようと身を捩るが、背中と後頭部に回された腕に阻まれ、逃げ出す事は叶わない。 「嘘は良くないですよ?だって……」 羞恥に戸惑う一二三の唇を塞ぎ、無防備なそこに舌を割り入れた。 「ん……っ」 咥内を優しく舐め、奥に引っ込められてしまった舌を絡め取る。くちゅくちゅと淫靡な水音を立てながら何度も角度を変えて口づけを交わす内に、次第に一二三の身体から力が抜けて行く。 そのタイミングを見計らいベッドへ押し倒すと、一二三はわかりやすく狼狽えた。 「な、な……っなにを……っ」 「何って、昨日の続きですよ。まだ時間ありますし、ちょっとだけ。ね?」 総一郎は一二三のジャケットを剥ぎ取って床に投げ捨てると、ネクタイに指をかけ、するりと引き抜きながら艶のある声でわざと耳に息を吹きかけるように囁いた。 手首を押さえつけ、耳や首筋にゆっくりと舌を滑らせながら、シャツのボタンを一つずつ外していく。 「ん、や……っ」 露わになった胸元に唇を這わせ、昨日散々弄った赤い尖りを指先で摘んだ。 「やっ、あ……」 一二三の脚がもどかしそうにシーツを蹴る。だが、総一郎の手は止まることなく、熱い指先で胸元の尖りを押しつぶし、痛みに震えた瞬間にぬるりとした舌が甘くそれを包み込んだ。 「んっ、あぁ……っ」 舌先で転がし、時折カリッと歯を立てると、一二三はビクビクと身体を震わせる。 「乳首勃ってますね……気持ちいいですか?」 「ぅ……ちが……っ」 「本当に?」 意地の悪い笑みを浮かべながら、閉じようとしていた足の間に膝を割り込ませ、膝頭で既に勃ち上がりかけている一二三自身をグッと押し上げるように刺激してやると、あっという間にズボンの上からでもはっきりとわかるくらい、彼のそれが脈打ち硬く張りつめていく。 「あっ、そこ……は……!」 躊躇う間もなく下着の中に手を差し込み兆し出した一二三の雄に指を絡める。 「あっ、んん……っ」 先走りを絡めて根元から扱き上げると一二三は厭々と首を振り、身を捩り、快楽の波から逃れようとする。だが、逃がさないとばかりに総一郎は扱く手に力を入れた。 「もうこんなになってる……昨日あんなに出したのに、元気ですね」 「や、ちがっ」 耳孔に舌を差し入れ、わざと水音を立てながら抽送を繰り返す。胸と性器と同時に責め立てられれば、快楽に弱い一二三はあっという間に陥落してしまう。 「ほら、もうイきそうじゃないですか。俺の手がヌルヌルですよ?」 「う、うるさ……っ、あ、あっ」 じゅくじゅくと透明な液がどんどん溢れ出て、手淫の動きに合わせて淫猥な音が響き渡る。限界が近いのか一二三は腰を跳ねさせ、総一郎の掌に自身を押し付ける。 激しく悶えながら総一郎のシャツの背を掴んで縋り付く姿に煽られ、手淫の速度を速めた。 「あっ、や、あ……っ、も、無理……っ」 一二三の足がピンと伸び、爪先がぎゅっと丸められた。次の瞬間、熱い迸りが総一郎の手を汚した。 「はぁっ……は……っ」 「いっぱい出ましたね」 一二三が吐き出した精液を指の腹で掬い取り、荒い息を吐く彼の前に差し出して見せた。一二三はそれを見て恥ずかしそうに目を伏せると「ばか……」と小さく呟いて顔を背けてしまう。それがなんだかいじらしくて可愛くて、もっと色々な姿を見たい。なんて、そんな思いが頭を過る。 だが流石にそれ以上の事を望むわけにはいかない。本来だったら、触れることはおろか会話を交わす事すら難しいような相手なのだ。 くったりとベッドに全身を預けて呼吸を整える一二三の姿にムラっとしたが、総一郎は込み上げる欲望をグッと堪え、身体を離そうとした。 だが――。 不意に、一二三の手がシャツの袖をきゅ、っと摘んで総一郎の動きを止めた。 「何処に行く?」 「水を取りに行くだけだから……。そんな不安そうな顔しないで下さい」 「別に、不安とかそういうのじゃ……」 眉尻を下げ、不安げに見つめて来るが可愛らしい。自分から離れないでと主張しているようなその仕草に、総一郎は一二三の頭をくしゃくしゃと撫で回した。

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