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耳にかかる吐息すら刺激になって、身体がビクビクと反応してしまう。 「もしかして……期待してます?」 耳朶を甘く噛まれ、熱い舌が耳孔に差し込まれた。 「や……ッち、違うから! 僕は、別に期待なんて……ッ」 必死に否定して足をバタつかせるが、総一郎の脚に絡め取られてしまって身動きが取れない。 「あれ? でも、ココ……こんなになっちゃってますよ?」 一二三のパンツの前を寛げ、総一郎が悪戯に中心に手を伸ばす。そして、下着越しに先端をクリクリと指先で弄られ身体が小さく震えた。 「あっ、や……っ」 「ほら、昨日出したばかりなのにもうヌルヌルだ……」 「……そ、それはキミが……触るから……っ」 逃げられないように腰をグッと引き寄せながら下着の中に手を入れられ、直接握り込まれる。 「西園寺さんって、やらしーですね。人のチンコ触ってエッチな気分になっちゃうなんて、変態かよ」 揶揄うような低く濡れた声にすら感じてしまい、じわりと先走りが溢れ下着が湿っていくのがよくわかった。 今まで、こんな事一度も無かった。精通こそしていたものの、一二三は性的な事には淡泊だった。 性に無関心だった所為で自慰の経験もほとんどない。定期的に事務的な処理を済ますだけで気持ちがいいとかそんな風に感じたことなど無かった。 それなのに、総一郎に出会ってからと言うもの、総一郎の一挙手一投足に振り回されて、自分の知らない自分ばかりが暴かれていく。 戸惑いを隠しきれずに固まっているうちにあっという間に下肢を剥かれ、足の間に総一郎の膝が強引に割り込んで来た。片足を掬い上げられ足裏に腕を差し入れて開かされ閉じられないように胴が差し込まれる。 総一郎と壁に挟まれた窮屈な体勢で剥き出しになった一二三の熱に総一郎のそれが触れた。 「ちょ、な、なにをっ?」 「しっ、大きい声出さないで。他のスタッフに気付かれますよ」 覆いかぶさるようにして耳に囁かれ、慌てて口元を掌で覆う。 「……っ、で、でも……何をする気だ」 もしかしてこのまま……? 不安げに顔を上げると。総一郎が額に軽くキスをしてくる。 「気持ちよくしてあげるだけですって。ほら」 言うが早いか、片手で総一郎の昂ぶりと一つに握られ、一二三は息を飲んだ。 「あ……っ、うそ……ッ」 信じられない。 こんな……いやらしい事を、自分達がしているなんて。 互いの性器同士を触れ合わせるなんて、考えた事もない恥ずかしい行為に頭が沸騰しそうだ。 器用に強弱を付けて擦り上げられれば自分でするのとは比べ物にならない激しい快感が沸き起こる。悲鳴になりそうなほどの喘ぎを両手で押し隠し、一二三はいやいやと首を振った。 「んっ……ァ、だ、ダメだってば……っ」 「ダメって言う割には、随分気持ちよさそうにしてますけど? 西園寺さん」 「ちが……っ、だってこんな、恥ずかしい事……ッ」 「今更何言ってんだよ」 一二三の両脚を担ぎ上げ、自分のそれで更に追い上げる。先走りで滑りがよくなり、擦る度にニチュニチュと湿った音が部屋中に響く。 「ひァ、んッ、やぁっ……ダメ……だ……ってっ」 目尻に涙を滲ませながら訴えるが、総一郎の手は止まらない。 「も、だめっ、……そう、一郎く……っ、こえが……声、でちゃ……!」 我慢しろと言われたって、与えられる快感が強過ぎて、とてもじゃないけど声を抑える事なんて出来そうにない。 「仕方ないですね、ほら……掴まって」 逃げ腰で壁に背を擦りつけていた一二三を抱き寄せ、自分の首に腕を回させる。 総一郎の服から香る柔軟剤の香りが鼻腔をくすぐり、眩暈がする。 一二三は言われるままに総一郎の首元にしがみついた。 「あ……っ」 ちょうど総一郎の首筋に唇が当たる位置に持っていかれ、一二三は吐息を零した。 総一郎の首筋に顔を埋めて声を押し殺す。だが、そうすると彼の匂いを強く感じてしまい、余計に興奮が煽られる。 「は……っ、や、もぅ……ッ」 「俺の首、嚙んでもいいから声、抑えて。それとも、誰かに聞かせたいんですか?」 「っ、ち、ちが……っんん……っ」 洩れ出る声を押し殺すように無我夢中で吸い付いた。きつく吸い上げ、歯型を残す。 そうしていないと声も、胸に溢れる正体のわからない感情も抑えることが難しいから。 こんな自分は知らない。知るのが怖い。性の知識に乏しい一二三の精神は、秘め事に対する背徳感と官能の狭間で揺れ動く。 なのに、身体は限界で。もう我慢が利きそうになかった。

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