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「大丈夫、怖くないですよ。だから、ね……?」 優しく囁かれればもう抗えない。一二三はただ無我夢中で総一郎にしがみ付きながら、与えられる快楽の渦に呑まれるしかなかった。 ぬめる体液が触れ合う部分をしとどに濡らす。熱くて、熱くてもうどちらの熱なのかもわからない。 「んっ……ん……っあぁっ、熱い……っ、も、……やっ、でるっ……出ちゃ……ッ、あ、ぁあっ……!」 「……ッ」 同時に、互いの熱を迸らせた。そうなるように、総一郎が導いたのだ。 ぐったりと身体を持たせかけながら、一二三がはぁはぁと荒く呼吸を繰り返す。 あまりにも気持ちが良過ぎて、頭が朦朧とした。 「随分、よかったみたいですね」 優しい声で、額をコツンと当てて聞いて来る。一二三は、総一郎の首筋に顔を埋めながら小さく頷いた。 気怠さが過ぎる身体は、もう指一本動かす事すら億劫で彼の胸に身を預けたまま動けなかった。 その仕草が甘えているような形になっていることに本人は気が付いていない。 いたわるように頬を優しく撫でられ、恥ずかしくて何も言えず、小さくコクリと頷くと指はあやすように顎をくすぐって離れた。 総一郎は多くは語らず、後始末も乱れた服を着せ直してくれるのも全てやってくれた。そう言う雰囲気になると意地悪になるくせに今は優しくて、その差に一二三は戸惑いながら身を委ねた。 総一郎の服からはやっぱりいい匂いがして、こうやっているとなんだか本物の恋人同士みたいだなぁ。なんて思う。 一二三にとって知識に無かったこの行為は、今まで曖昧だったセックスと言う行為をリアルに感じさせるような体験だった。 まるでもう身体を重ねてしまったかのような錯覚に陥っている。 何事も無かったかのようにシャツを羽織り、仕事用のジャケットを羽織る姿をぼんやりと眺めながら一二三は、まだ僅かに熱の残る身体でぼんやりとそんな事を考えた。 「随分と遅くなってしまいましたね。部屋まで送ります」 白い手袋を着用すれば、さっきまでのいやらしさなんて微塵も感じさせない。ただ、シャツの襟からチラリと覗く綺麗なラインの首筋に、先ほど付けた痕がくっきりと残っていた。 「す、すまない!」 「はい? なんですか、急に」 「首の……」 キスマーク、とは恥ずかしくて口に出来ず、もごもごしていると総一郎がああ、と納得したように頷いた。 「別にいいんじゃないですか? 俺にこんなの付けれるなんて恋人の特権ですよ」 その痕にそっと触れながら、にやりと意地の悪い笑みを浮かべてウインクされ、先ほど自分が思った事を見透かされたようで一二三は頬を赤らめた。 総一郎はそんな一二三を面白そうに見つめ、一二三の頭をポンポンと軽く撫でてから、早く行くぞとばかりに部屋の扉を潜った。

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