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第9話 SEKAI yo OWARE

 ピピっと音をたてる体温計を引き抜くと、デジタル表記は39.0を示していた。  最悪だ……  熱のせいでぼんやりとする頭と、節々が痛む体をベットに横たえて、京子は天井を仰いだ。  今頃クラスメイトやクズ先輩によってあらぬ噂がたてられているに違いない、京子には確信に近い予感があった。  このまま世界が壊滅したらいいのに――  京子は現実としばしの別れを告げ、まどろみの中に落ちていった。  京子の意識を呼び覚ましたのは、メッセージの受信をつげる振動だった。  ひっきりなしに京子のスマホが震えている。  母が学校に休みの連絡を入れてくれたのが、午前8時頃。  窓の外は陽が陰り始めている。  寝起きには強すぎるスマホの光に顔をしかめながら、受信したメッセージを確認する。    京子は、しばしメッセージの内容を目で追っていたが、京子不在のまま京子の話題で盛り上がるグループラインをそっと閉じた。  汗を吸ってじっとりと重いパジャマが不快だった。  苛立ちに任せて布団をはねのけ、パジャマを脱ぎ捨てる。  半日ほどしっかり寝たおかげで、熱は下がったようだった。  朝の不調が嘘のように体が軽い。  京子の意志に反して、京子の体も世界も健やかだった。  窓の外からは、何が楽しいのか子どもたちの歓声と笑い声が響いている。     ふたたび京子はスマホを手に取ると、グループラインへメッセージを打ち込んだ。 『ありがとう!明日には学校行けると思う!  心配かけてごめんね』  白いクマが愛らしく謝っているスタンプを機械的に添える。 クラスメイトABCからぽぽぽと連続でメッセージが届く 『京子~  大変だよ!』 『先輩ったら京子にフラれた腹いせにあることないこと言いふらしてるの!』 『それなー  でも安心して!  私たちが京子は悪くないって弁解して回ってるし、「立花京子を擁護するスレッド」たてておいたから!』 『ほんと先輩サイテーだよね』 『あんな人と思わなかったよー』 『ほんとそれなー  自分のこと棚に上げて「立花京子被害者の会」を立ち上げるとか息巻いてるらしいよ』  本当にありがとう  わざわざ騒ぎを大きくして、インターネット上に個人名までさらしてくれて 『京子!  実行委員に推薦しておいたからね』 『そうそう!オープンスクール実行委員』 『それなー  京子のがんばりしだいで汚名返上のチャンスだよ☆』  本当に余計なお世話を焼いていただきありがたき幸せ☆  京子はめまいをおぼえ、ベットに再び倒れこんだ。  5時を告げる「夕やけ小焼け」チャイムが遠くに響き、パタパタと軽やかに家路を急ぐ子どもたちの気配が重なる。  京子は両手で顔を覆いながら、この素晴らしき世界に明日がこないことを祈った。

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