28 / 37

第28話 シロ

 大神を先頭に、コンビニから徒歩数分の大神神社へと一行は戻ってきていた。 「……春橙と初めて会ったのもこの神社だったよな」  大神と京子は鳥居をくぐり先に進んでいる。桃慈は溢れ出す追憶の波に翻弄され、鳥居の前で足を止めた。 「そうだった。べそべそ泣いてるとーじに初めて会った」  にやにやと笑う春橙に文句を言おうとそちらを向くと、二人の間を歩いていたシロがすっと鳥居をくぐり抜けた。反射的にシロを目で追う。シロが鳥居をくぐり抜けた瞬間、桃慈たちの背後から強く風が吹きつけた。 「うわっ」   たたらを踏むように鳥居の内側、神社の敷地内に足を踏み入れる。かろうじて転ぶことを免れた桃慈は、目を強く閉じたまま、風が収まるのを待った。  風が弱まるのを待ち、そっと目を開ける。  桃慈は目を大きく見開き、目をこらして目の前に見えているモノをまじまじと見つめた。  え……  自身の見ているものが信じられず、数回強く瞬きをする。それでも、桃慈の目に映る光景に変化はなかった。  視界の端に映る春橙、振り返り髪に手をやったまま驚いた表情で固まる京子、苦虫を嚙み潰したような顔でこちらを見ている大神。――そして……シロ……のいた場所には、和装の男性が立っていた。  腰まで伸びた長い髪は、シロの毛並みを思わせた。気温は30度を超えるというのに、薄い水色の長着に深い藍色の羽織、真っ白な足袋に雪駄を履いている。    男は自身に注目が集まっていることを確かめるように、ゆったりとしぐさで一同を見渡した。切れ長の瞳に一瞥されると、その眼差しの妖艶さに桃慈はゾクリと肌が粟立つのを感じた。  男はつと白い顎をそらせ、口を開いた。 「私がシロだ」  それ以上は何も説明するつもりがないらしく、胸の前で腕を組み悠然としている。  それを待っていたかのように、瑚々は呆然と突っ立っている桃慈たちの横をすり抜け、参道を登っていく。自然、桃慈たちの視線は大神に向かった。救いを求める信徒のごとく。  大神は一つ、長い長いため息をつくと、 「まずは中に入らねぇか」 と、疲れた声で言った。

ともだちにシェアしよう!