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第38話 決戦前夜
くっきりとした丸い月が、シロの毛並みを青白く染める。
大神は鳥居をくぐり抜けながら、ちらりとシロへと視線を落とし、心の中で安堵のため息をついていた。
今夜が満月で本当に助かったな……
鳥居をくぐり抜けると、シロの輪郭がふわりと歪み、人型へと変わった。
バランスを崩したようによろめくシロの二の腕を掴み、やや強めの力で引き寄せる。
「みえっぱり」
腕を掴む手をゆるめないまま、怒りの滲んだ声で大神は言った。
シロはふっと息だけで笑うと、体を起こした。シロの細く長い髪が、羽織を滑るさらさらという音が夜の音に混じる。
「……少しふらついただけだ」
離せと言うように腕を引くシロを、大神は仏頂面で見下ろす。
「いいから。よっかかってろ」
シロは口元に笑みを浮かべて、
「なんだ。今日はずいぶん甘えただな?」
と、からかうように言った。
大神は苛立ちを隠さず、大きくため息をつき、
「力を使い過ぎだ。顔色が悪い」
と、顔をしかめた。
「私を誰だと思っている?」
この程度ではハンデにもならないと、にいと唇を笑みの形に変え、不敵に笑うシロ。
大神はシロからつと目をそらすと、しばしの沈黙のあと、重い口を開いた。
「……なぁ」
大神が足を止め、シロも足を止めて大神の言葉を待つ。
「……こうなるってわかってても、二人を引き合わせたか?」
シロは応えない。ただ大神に視線を向け、聞いているという意思を示した。
「……どうにかしてやれねぇのかよ。お前、カミサマなんだろ……?」
大神は力なくつぶやくように言う。
「神とて万能ではない。それはお主とてわかっておろう?」
「……わかってる」
淡々と答えるシロに、苦々しくつぶやく大神。肩を落とすその姿を、シロはじっと見ていたが、ふっと寂し気に笑った。
「お主は変わらんな。
……でも、それでいい。お主はそれで」
シロは視線を足元に落とす。月明かりが反射してシロの髪が銀色にほの光る。囁いた言葉は、月夜の闇に溶けて消えた。
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