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第39話 旅立ちの朝
「それじゃあ……行ってきます」
朝未きの頃、母と向き合う桃慈と春橙。空に浮かぶ月はぼんやりと弱々しい。
団地の共同玄関を背に、未知子は息子たちを慈愛のこもった目で見つめながら、
「いってらっしゃい。気をつけてね」
と言った。
桃慈は一つ静かな顔でうなずくと、春橙の手を取り、母に背を向けて歩き出した。
未知子は桃慈の宙に浮いた手に、切なげな視線を向けたが、すぐに彼らの後ろ姿を目で追った。
小さくなっていく最愛の息子たちの姿を、その場から動かず、ずっと見ていた。
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