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第9話

 よし、と、エドワードは拳を握って全身を奮い立たせた。そして再び歩き出そうとした。 「どうしたんですか、エドワード?」  背後から柔らかい声がした。エドワードは聞き慣れた声にくるりと振り返った。 「兄上!」  肩まで伸びた金髪の青年──レオナルドが、エドワードに笑みを向けて立っていた。エドワードはすぐさまレオナルドへ近づいていく。 「これから父上に魔物討伐参加をお伝えしに行こうとしていました!」 「討伐ですか。ようやくエドワードも参加できるほど強くなったのですね」 「はい! 僕もロドルフに近づいてきました」 「それは頼もしいかぎりです」  エドワードと同じ緑色の瞳は、同じように喜んでくれた。  レオナルドはコーニッヒベル王国第一王子であり、エドワードの兄でもある。幼少より身体が弱く、体力的にエドワードより劣っていた。レオナルド自身も、エドワードの方が王に向いていると子どもの頃から考えており、早々とエドワードが国王になることを応援していた。 「兄上はこれから講義ですか?」 「いえ、今終えたところです」  レオナルドは胸元に抱えた本の束を持ち直した。

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