31 / 171

第31話

「ごめんね、ロドルフ」 「嫌、でしたか……?」 「ちっ、違う。そうじゃなくて、その、こんなことさせちゃって、申し訳なくて……手も汚しちゃったし」 「これくらい大丈夫です」 「僕はよくないよ……」  エドワードは枕元に置いてあった濡れたタオルを手にして、ロドルフの手を丁寧に拭った。嫌な感覚は完全に消えないかもしれないけれど、せめてもの償いだ。  布越しに、ロドルフの手の感覚を改めて知る。エドワードよりもずっと長い間剣を握っていたから、手のあちこちが隆起している。  努力の証が、エドワードの敏感な部分に触れて刺激を与えていた。  ふと、エドワードは何を考えているのかと小さく声を漏らした。ロドルフに聞こえていないだろうか。 「恐れ入ります、殿下。もう大丈夫です」  そう言ってロドルフは、エドワードからタオルを持っていった。そしてそのまま水の入った器も持って立ち上がった。

ともだちにシェアしよう!