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第57話
エドワードは数日ぶりに木剣を握ると、いつになく身体が固まった。訓練用の剣を握っただけでこんなに緊張したのはいつぶりだろう。周囲に誰もいないことを確認して、軽く木剣を振るう。
ロドルフが仮初めの専属騎士となった日以降、何度も発情に苦しめられた。突発的な症状は事情を知らない人の前だろうとお構いなしに出てきて、なんとか知られてはいないようだった。
なんとかロドルフを呼ばずに一人でどうにか対処できたものの、ただ手を動かすだけではできなかった。泣きそうになりながら、ロドルフの手を思い浮かべて。そうしてようやく達することができた。
次第にロドルフの声や笑顔も浮かび上がるようになって、まるでロドルフにしてもらっているような気分になった。さすがにそのことは本人には言えず、一人罪悪感を抱えている。
同時に顔を合わせるのも気まずくなってきていたが、ハーリーの診察時やフィリップやレオナルドに報告する際には一緒にいなければならない。その間はずっと平静を装って接していた。
今日は久しぶりに騎士団長としてのロドルフだ。エドワード一人だけに構っているわけにはいかないので、騎士団の士気を高めるためにとエドワードが頼んだ。
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