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第62話

 一礼をしてそれぞれ構えると、息を合わせたかのように同時に動き出した。カツッ、と木剣のぶつかる音が響き、すぐに距離を離す。  どちらも勝利は譲る気はないと言わんばかりの勢いでん、何度も何度もぶつかっていく。その度に歓声が上がる。  エドワードはロドルフから視線を逸らせなかった。無駄のない動きから学びが多いのはもちろんのこと、いつになく楽しそうに笑っている顔が印象的だった。  騎士団長という立場から模擬戦をすることはほとんどないけれど、圧倒的な強さ、いきいきとした表情、どれをとっても剣を振るうロドルフの姿は本来あるべき姿だと思わされた。  ロドルフを独占してはいけない。エドワードはそう考えるたびに胸の奥がチクリと痛むような気がした。どうしてだろう、考えても考えても理由が分からない。  カツンッ──  気づけばロドルフは、軽快な音を響かせながらオリヴェルの木剣を飛ばしていた。 「ロドルフ団長の勝利!」  一瞬の沈黙が場内を包み込んだかと思えば、一気にわあっと団員たちの歓声で盛り上がった。今日一番の盛り上がりを見せている。 「やっぱりお強いですねー、ロドルフ団長は」 「オリヴェルも油断できなかった。まだまだ努力しないとな」  ありがとうございました、と、ロドルフとオリヴェルは歓声に包まれながら礼をした。

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