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第63話

「では、今日の模擬戦は以上とする」  顔を上げたロドルフは、皆に向かって声をかけた。エドワードは皆と同じようにさっと動いて整列した。少しは回復したようだけれど、まだ甲冑が重い。  ロドルフとオリヴェルを前にして整列しながら木剣を下ろす。 「今日の鍛錬はこれまでとする。各自休息や見回りを頼んだ」 『はっ!』 「ではここからは、ロドルフ団長に代わり俺が団長を務めます。見回り当番以外は解散です」  オリヴェルの声とともに、皆一礼してからそれぞれ動き出した。  エドワードはその場で兜を外した。頭だけ空気が触れるだけでもかなり楽になった。 「殿下、お身体は大丈夫ですか?」  ロドルフはすぐにエドワードの方へ近寄ってきた。先ほど激しい戦いを見せていたとは思えない軽やかな動きに、尊敬ばかりだった。 「うん、だいぶ楽になったよ。やっぱり数日動かしてないだけで身体が鈍っちゃったなー……」 「殿下は筋がありますので、また鍛錬を重ねればすぐに戻りますよ」 「そう、かな……。ロドルフのかっこいい姿見てたら、部屋でも少し身体を動かしてないといけない気がしてきたよ」 「休むことも上達には欠かせません。お部屋ではゆっくりとお過ごしください」 「分かった……」  この調子では、部屋でこっそり身体を動かすことすらできそうにない気がする。

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