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第72話

 夜になっても、ロドルフを見るたびに彼の唇へと視線が向いていた。  キスされたい。その気持ちが拭えずに、ロドルフに負担を強いてはいけないと自ら引き締めることを繰り返していた。  コンコンッ── 「殿下、失礼いたします」  夕食を終えてソファでひと休みしていたところに、ロドルフは入ってきた。 「そろそろ陛下とレオナルド殿下にご報告するお時間です」 「うん、分かった」  エドワードは立ち上がって、ロドルフの方へと近づいていく。大丈夫、ここ最近ずっとやってきたから平静を装うことは慣れている。それでも緊張のせいか少しドキドキする。  部屋を出て、エドワードを前に会議室へと向かう。一緒にいるけれど、ロドルフの姿を目にしなければ落ち着いていられる。  無言のまま会議室へ入ってすぐに、フィリップが入ってきた。 「父上、夜遅くにありがとうございます」 「エドワード、元気そうでよかった」  軽く会話を交わしながら、フィリップは座る。忙しい合間をぬって、エドワードのために時間を使ってくれていることが申し訳ないと思いつつも嬉しかった。エドワードが成人してからは朝食以外の時間に一緒に過ごすことはなかなかなかった。 「すみません、遅くなりました」  バタバタと慌てながら本を抱えたレオナルドがやってきた。すぐにフィリップの隣に座る。

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