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第82話

 どうしてそんな顔をするの、エドワードにはそう問いかける勇気はなかった。  ロドルフの手がそっと離れていって、エドワードに背を向けた。  その間に上体を起こして下肢を確認する。やはり寝間着も身体も全く汚れていなかった。ロドルフが全て受け止めてくれた。 「外でお待ちしております」 「うん、分かった」  エドワードの顔を見ることなく、ロドルフは静かに出ていった。 「ごめんね、ロドルフ……」  何度そう言っても、ロドルフはエドワードに非がないと返してくる。騎士団長というあるべき姿が見られないことが、余計に重くのしかかる。  もう考えることをやめて一人になった部屋で、再び寝てしまいたいと一瞬思ってしまった。  ロドルフと顔を合わせるのも気まずいけれど、フィリップと顔を合わせるのも気まずい。  昔から優しい父を怒らせてしまった後は、いつも申し訳ない気持ちでいっぱいだった。幼少の頃はちょっとしたいたずらで、翌日にはフィリップの方から話しかけてくれた。  けれども、今回は命に関わるようなこと。同じように接してくれる気がしない。エドワード自身が悪かったけれど、自ら上手く会話をきり出して謝罪できるだろうか。

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