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第138話

 間違いない、エドワードに呪いをかけた魔物だ。  エドワードは攻撃を仕かけたくなるのを必死で抑えながら、発情の演技を続ける。その間にも、魔物の動きをそれとなく観察する。  下品な笑みを浮かべた魔物は、獲物を食らうためにゆっくりと慎重に近づきながら、シュルリと蔦を伸ばしていく。  もし触れられたら一気に魔物に囚われてしまうかもしれない。それでも、限界まで伸ばしてくるように仕向けなければ。  エドワードは右手を鎧の内側に忍び込ませながら、もぞもぞと全身を動かす。 「あぁ……くっ……」  魔物の蔦がエドワードの顔に触れそうな距離まで近づいてきた。 「……今だ!」  大きな声を出しながら、エドワードは短剣を抜き出して魔物に向かって斬りつけた。  寝転がっていたため先端を掠めた程度だったが、驚いた魔物は動きを止めてしまった。  その間に、ロドルフたちが駆け寄ってきて魔物を取り囲んだ。 「殿下、こちらを」  エドワードは立ち上がると同時に、ロドルフから剣を受け取って鞘から抜いて構える。

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