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第49話 そして、夏は君と始まる

「わかってますよ」  そらは真っ直ぐに見返し、少しだけ口角を上げた。 「だって、俺……調べましたもん。いろいろ」  その瞬間、啓太朗が顔を覆い、低く笑う。 「……もぉ……反則やって、それ……」  額を押さえながら、視線を落とす。 「じゃあ……今から俺がそらにやりたいことも、わかっとる?」 「はい、わかってます」  迷いもためらいもなく、真剣な声。 「その覚悟で来たんで……お願いします」 その一言で、啓太朗の中の何かが完全に外れた。  ゆっくりと手が伸び、そらの頬を包み込む。  親指の腹が、優しく頬をなぞるたび、肌が熱を帯びていく。  そのまま唇が近づき、触れるだけのキスが落ちる。  けれど、それはすぐに深く、熱を帯びたものへと変わっていった。  唇の温度、呼吸の速さ、心臓の鼓動――全部が一気に近づいてくる。  啓太朗の手は頬から首筋へ、そして肩口へとゆっくり滑り降りる。  触れられるたび、そらの体はびくりと反応し、  シーツの上で指先がきゅっと握られた。 「……そら」  名前を呼ばれるたび、胸の奥が熱くなる。  啓太朗はその熱を確かめるように、もう一度深く口づけた――。  啓太朗の手が、そっとズボンの端に触れる。 「……これ、ぬがしていい?」  問いかけに、そらは言葉を探すように一瞬だけ視線を揺らし―― 小さく、こくんと頷いた。 「……ありがと」  その声は、抑えきれない熱と、どこまでも優しい響きを含んでいる。  啓太朗は慎重に指先を動かし、布を腰から滑らせるように脱がせた。下着ごと、シーツの端へ。  露わになった肌に、思わず息を飲む。  Tシャツの裾をゆっくりと押し上げ、胸元までまくる。  指先でなぞるように、そらの上半身を両手で撫でる。  形を確かめるように、滑らせ、包み、触れていく。  時折、指が小さな突起をかすめる。  その瞬間、そらの肩がびくりと震え、「……ん」と短く声が漏れた。  その反応に、啓太朗の喉が静かに鳴る。   そらの肌を滑る指先は、まるで薄い膜を破らないように慎重だ。  胸の曲線をなぞり、腹筋のかすかな起伏を確かめ、また胸へと戻る。  かすめるだけのはずが、指先に伝わる柔らかさと温もりに、啓太朗の呼吸は少しずつ深く、  重くなっていく。  視線が自然とそらの表情を追う。  目を細め、息を小刻みに吐きながら、触れられる度に身体を揺らすそら。    親指の腹でゆっくりと突起を押し、軽くひねる…… 「……っ」  堪えきれずに上がった声が、部屋の空気を熱くする。  啓太朗は唇をそらの鎖骨に落とした。  口づけの間にも、手は止まらない。  撫でるたびにそらの胸が小さく上下し、逃げ場をなくすように優しく、  しかし確かに囲い込んでいく。   啓太朗は胸元から手を離さず、唇をそらの唇に重ねる。  口づけながら、もう片方の手がゆっくりと腰を越え、太ももへと下りていく。  やがて、指先が柔らかな内ももをなぞり――その奥へと忍び込んだ。  人差し指の腹で、きゅっと閉じられたそこに軽く触れる。 「……ここも、調べた?」  低く、抑えきれない声で問う。  そらは一瞬だけ目を逸らし、小さく、こくんと頷いた。 「……じゃあ、今からほぐしていっていい?」  問いかけに、また頷く――  けれど、すぐに「でも……恥ずかしい……」と掠れた声が漏れる。  顔も耳も、熱に染まりきって真っ赤だ。  そのまま上目づかいで啓太朗を見上げ、細い指先がシーツをぎゅっと握りしめる。   啓太朗はそらの身体から手を離し、ベッド脇の鞄を引き寄せた。  中から小さな箱と透明なボトルを取り出す。  ボトルの蓋を開け、とろりとした液体を手のひらに落とし、指先まで馴染ませる。  その動きを、そらはシーツの上で息を止めて見つめていた。  ぬるりと光る指が、自分に触れる瞬間を想像するだけで、胸が速くなる。 「……冷たくないように温めてからな」  低い声に、さらに鼓動が跳ねた。

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