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第50話 そして、夏は君と始まる

 「力、抜いて……」  啓太朗は囁き、そらの太ももを軽くさすった。  温もりを伝えながら、ゆっくりとその中心へと戻っていく。  指先で、閉ざされた場所の入り口をなぞる。  そらが小さく息を吸い込み、肩がこわばる。  その様子に、啓太朗は唇を耳もとに寄せ、息を混ぜて囁いた。 「大丈夫。痛くしない」  人差し指がほんの少しだけ押し込まれる。  熱と柔らかさが触れた瞬間、そらの腰がびくんと揺れた。  慌てて指を止め、様子をうかがう。 「……平気?」  問いかけに、そらは唇を噛みしめ、かすかに頷く。  指を少し引き、潤滑を確かめながら、また押し入れる。 「……ん……んっ……」  ゆっくりと出し入れし、内側を撫でるように動かすたび、そらの呼吸は浅くなっていく。  その反応を感じながら、啓太朗の手はさらに丁寧に、内側を探る。 「……いい子」  低く甘い声が、そらの耳をくすぐった。  啓太朗はそらの反応を確かめながら、何度もゆっくりと指を動かす。  そらは、内側の硬さがわずかに和らいでいく感触があった。 「……もう少し、ほぐすから」  そう言って、指先で敏感な内壁をやさしく撫でる。  そらの喉が小さく鳴り、吐息がもれる。  十分に時間をかけたあと、啓太朗は指をいったん止めた。  そらの腰に片手を添え、視線を絡める。 「……二本目、入れても大丈夫?」  そらは頬を染めたまま、迷いのない瞳でこくんと頷いた。   「……ありがと」  掠れた声でそう告げ、啓太朗はそっと指を抜き、もう一度ローションを指先に馴染ませた。  その手が再び、そらの内側へ向かう。   ひと呼吸おいてから、人差し指をゆっくりと押し入れ、そのすぐ横に中指を添える。 「力、抜いてな……」  低く囁きながら、そらの腰を支える手に少し力を込める。  慎重に、わずかずつ広げるように押し進めていく。 「……っ」  そらが小さく息を詰めた。  すぐに動きを止め、顔を覗き込む。 「痛い?」  首を横に振る仕草に、啓太朗は安堵の息を吐いた。  指をゆっくりと深くまで差し込み、内側を探るように動かす。  少しずつ、少しずつ――硬さが和らぎ、柔らかさが指を包み込む感触に変わっていく。   啓太朗は、そらの頬に軽く口づけを落とした。  その間も指は休まず、奥と入り口を交互になぞり、やさしくほぐし続けた。  二本の指が、ゆっくりと内側を広げるたびに、そらの呼吸は熱を帯びて速くなる。 「……っ、は……」  小さな声が、漏れるたびに甘く震えた。  啓太朗は額にかかる髪をそっと払ってやり、耳もとで低く囁いた。 「……もう、だいぶいい感じやで」  奥を軽く押しながら、指先で敏感な場所をなぞる。 「ん……っ」短い声とともに、そらが腰を浮かせる。  その反応に、啓太朗の喉が鳴る。  ゆっくりと指を引き抜くと、そこは熱と湿り気で満たされていた。  片手を伸ばし、さっきシーツの端に置いた小さな箱を取る。  包装を破る音が、部屋の空気をさらに濃くする。  視線をそらに戻し、唇の端をわずかに上げた。 「……もう、挿れていい?」 「……ん……」  頬を染め、吐息混じりに小さく頷くそら。  迷いのない瞳で見上げられ、啓太朗は深く息を吸い込む。  両手でそらの腰を包み、そっと引き寄せた――。

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