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第1話-2 翌朝
突然玄関のドアが開き、30代ほどの女性が入ってきた。
「だ、誰?!」
その女性は秋の姿を見て、声を上げた。
「あっ、あっ……い、今瀬…です」
秋が咄嗟に答えると、再び怪訝そうな顔で同じ質問を女性は繰り返した。
「…誰?」
「あ、あの…しゅ、壱川くんの、高校の友達で…」
秋がそう言うと、まるで聞いたことがない言葉みたいに、「ともだち?」と女性は繰り返した。
そして再び「友達」と言い直し、表情を整えて言った。
「壱川春のマネージャーの、松永春香 です。」
秋はそれに、急いで頭を下げる。
松永は部屋に入り、秋に尋ねた。
「春は?」
「あ、まだ、寝てます。あの、全然、寝れてないみたいで…その、夜も全然…熱、上がったり下がったりで」
「…そう」
「あの」
「?」
「ライブ、出るんですか、春」
秋がそう言うと、松永は小さくため息をつき、言った。
「…出るって言うと思うよ」
そうして寝室に消えた松永のあとを、秋はついていく。
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