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第1話-3 翌朝

松永は慣れた様子で、春に大きな声で呼びかけた。 そして首元に触れ、体温を確認するような仕草をして、少し眉を顰めた。 そのまま春を支えるように春の上体を起こし、再び春に声をかける。 そうしてぼーっと目を開いた春に、松永は問いかける。 「体調は?」 春は小さな声で言う。 「…大丈夫です」 松永はその返答を聞いて、春の表情を確かめるように眺めた後、そう、と短く返事をし、じゃあ支度してね、と行って寝室を出た。 寝室の入り口に立っていた秋は、そんな松永に不安そうな顔を向けた。 松永はその視線に気づき、苦い顔をして肩をすくめた。 リビングに出た松永に、秋もついていく。 秋が何か言おうと言葉を選んでいると、 松永が尋ねてきた。 「春に呼ばれて来たの?」 秋は咄嗟に返事をする。 「あ、いや、俺が…ニュース見て、びっくりして…その、押しかけたって言うか」 「そう 家知ってたの?」 「いや、その…今回知りました 寮に住んでると思ってたので」 「聞いたら答えたの?」 「え?」 「ここの住所」 「あ、まだ覚えてないって言われて、それで、マンション名なら分かるかって聞いて…それで」 「…そう」 松永は何か腑に落ちないのか、 どこか浮ついた返事をした。

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