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第4話-5 病室にて

秋は入り口を凝視した。 すると、二人の女性が入ってきた。 一人はスラリと背の高いツンとした綺麗な美人、そしてもう一人はふわりとした雰囲気を纏ったこれまた美人な人だった。 最初に声をあげたのは、そのツンとした美人の方だった。 「体調はどう?」 春は「はい、大丈夫です」と答える。 横にいた松永が秋の耳元でそっと呟く。 「あれは事務所の社長。霧峰さんね」 秋は静かに頷く。 となると、残る一人――ふわりとした雰囲気を纏った女性が、春の母親なのだろう。 秋は思わずじっとその人を見てしまう。 少し日本人離れした春の顔とは違い、春の母親はすっとした日本美人、というような風貌だった。 しかしシャープで無駄のない骨格や、小ぶりな口元は、春とよく似ている、と秋は思った。 春の母親が口を開いた。 「遅くなってごめんね」 そう優しい口調で春に語りかけるように言った。 ううん、来てくれてありがとう、と、同じような優しい口調で、春は答えた。 春の優しい物言いは、お母さんとそっくりだ、と秋は思わず小さく微笑んだ。 そうして松永がベッドのそばに椅子を並べ、そこに霧峰と春の母親が腰をかけた。 そして松永は秋を手招きし、少し離れたところで秋と松永も椅子に腰掛ける。 「ちゃんと食べてる?」 霧峰のその問いに、はい、と春は頷いた。 「仕事のことは気にしないで、休めるだけ休みなさい」 2年くらい休んでも良いわよ、と霧峰は言い、それに春が小さく笑った。 そして霧峰は松永に目線を配り、二人は病室を出ていった。 秋は三人で残された緊張感で、じっと病室の端っこで固くなった。

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