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第5話-2 キス以上のこと

それから二人が布団に入ったのは深夜3時過ぎだった。 「…明日も早い?」 秋が尋ねる。 「明日はちょっと遅いよ 10時くらいかな」 「10時!?」 春は大抵6〜7時には毎日家を出ていってしまう。 いつも日が変わってから帰宅してくるから、毎日2〜3時間ほどの睡眠時間だ。 「じゃ、じゃあ…ちょっと長く寝れるね」 「うん」 静かに春が頷いた。 秋が徐に春の方へ身体を向ける。 春もそれに気付き、ゆっくりとこちらを向いた。 春の首元に伸びた秋の手は、ゆっくりと春を引き寄せ、二人は唇を重ねた。 あれから、寝る前には、いつもそうしてキスを交わしていた。 けれど、いつもそれだけ。 春が優しく微笑み、いつものようにすっと瞼を閉じた。 しかし秋は、そうして目を閉じた春のTシャツの首元を、きゅっと掴んで控えめに引いた。 春が瞼を開ける。 「…ん?」 そう小さく呟いた春に、秋は再び唇を重ねた。 秋は口を少し開き、春の唇を優しく挟み込むようについばんだ。 そうして開いた隙間から、そっと舌を伸ばして春の唇を撫でた。 薄く開いていた春の目が秋の目線を捉える。 それは、いつもの春の優しい眼差しではなかった。 微かに欲が混じる、熱っぽい視線。 そして秋がもう一度重ねたキスに、春は応えるように、ゆっくりと舌を伸ばした。 熱っぽく互いの舌が絡み合う。 時おり吐息が小さく漏れる。 互いの舌が絡み合って響く水音とそれに、秋は無性に掻き立てられる。 もっと、もっと――。 「…触ってもいい?」 秋がそう問うと、春は伏目がちに小さくコクンと頷いた。

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