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第5話-7 キス以上のこと

ふ、と突然その手が止まり、春が身体を起こした。 そして春はベッドのそばにあったチェストからローションを取り出した。 新品なのか、春がキャップを回すとパキッと音がした。 「…買ったの?」 秋が小さくそう尋ねる。 「俺とするために…買ったの?」 「……そうだよ」 「…どこで買ったの?」 「え?」 「どこで?いつ?」 「…なんで?」 「なんか……エロいから」 「…なんで」 秋の言葉に春が小さく笑った。 そしてボトルからぬるりとした液体を手に取り、春は再び秋に覆い被さるように身体を倒した。 「秋」 「ん?」 「自分で前、触れる?」 「…うん」 春のローションで濡れた指がゆっくり秋の穴を優しく撫でた。 そしてゆっくりと春の指が入ってくる。 ん…と小さく声をあげる秋に、春はその様子を伺うようにたびたび視線を秋に向ける。 ゆっくり優しく、撫でるように中を指が這う。 「痛くない?」 「うん、うん…」 そう言って秋は春の腕を掴んで引く。 秋が春の首に手を回して抱き寄せる。 春の手は秋の中でゆっくりと動き続けている。 感じたことのないその感覚に、秋は吐息を漏らす。 春の唇が、秋の首筋、肩、胸をそっと撫で、時々ぬるりと春の舌が肌を撫でるのが分かる。 「あっ…ま、まって…」 春の動きを止める。 「痛い?」 「ち、違う…違って…」 すると先ほどまで触れていたところに、春の指がそっと当てられた。 思わず声を漏らす秋。 「ん…っ…そ、そこ…なんか…」 春の指がじっとりとそこを撫ではじめた。 秋はその感じたことのない快感に、思わず声を漏らして身を仰反る。 「待って、待って…」 そう言った秋の言葉を聞かず、春は同じようにそこを撫でるように中で指を動かし続ける。 秋は春にしがみつくように、声をあげ続けた。 びくびく、と勝手に秋の体が痙攣する。 はあ、はあ、と息を大きく漏らす秋。 「…秋」 見上げた先、春の瞳はいつもの穏やかな色ではなく、ただ鋭く、欲を映していた。秋はその目に、再び自分のものが熱を帯びるのが分かった。 余裕のない表情。 いつもの微笑みはそこにはない。

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